安全で住みよい,元気の良いまちづくり
「人あったか,まちいきいき,自然つやつや 伊豆市」に向けて

大城伸彦(Nobuhiko Oshiro、静岡県伊豆市長)

「砂防と治水167号」(2005年10月発行)より

○伊豆市概要
 伊豆市は,静岡県伊豆半島の中央部に位置し,平成16年4月1日に旧修善寺・土肥・天城湯ケ島・中伊豆の4町が合併して誕生した人口約38,000人の市です。市域は東西25km,南北20kmの範囲に及び,総面積は363.97km2となっています。市の南側には標高1,406mの万三郎岳を筆頭に万二郎岳・遠笠山・猫越岳といった天城の山々が連なり,市のほぼ中央を日本の太平洋側では唯一南から北に向かって流れる狩野川があり,鮎友釣りの発祥の地としても知られています。気候は温暖な中にも山間部では積雪も見られ,年間降水量は3,000mmを超えることもあります。
 太平洋に広がる駿河湾の海,天城の山々,豊富な温泉,そして海の幸,山の幸に恵まれ,歴史と文化の香り高き「人あったか まちいきいき 自然つやつや 伊豆市」であります。「世代を超えて支えあい,創造を湧き起こすまち」を新市の将来像とし,伊豆地方の中心的な都市となっていくことを目指しています。
 伊豆市は東京からおよそ100km,県都静岡市から60km内,清水港から伊豆市土肥港までカーフェリーで約1時間の距離です。市内への年間観光交流客数は,およそ342万人,宿泊客数は160万人,温泉は1分間に15,000リットルと豊富な湧出量を誇っています。
 伊豆市の主な産業は観光です。観光スポットとしては,四季折々の「富士山」の眺め,渓流に広がる「わさび沢」,国の重要文化財である「天城山隧道」,日本の滝百選の「浄蓮の滝」,弘法大師ゆかりの「修禅寺」と「独鈷の湯」,四季折々の花木とミニSLが楽しめる「虹の郷」,川端康成の小説「伊豆の踊子」を辿る「踊子歩道」,グァム島恋人岬と友好関係にある「土肥恋人岬」など枚挙に暇がありません。
 市の中心部を2本の国道が通り,現在,東名自動車道との連携を取り,伊豆半島先端部の下田市を結ぶ伊豆縦貫自動車道の建設が進められております。今後は,高規格道路の整備により,慢性的な渋滞が緩和され,観光地「伊豆」へ多くの観光客が訪れることで,観光スポットも今以上にクローズアップされると同時に,交流人口の増加などによる地域の活性化が大いに期待されるところです。

日本滝百選の浄蓮の滝

西伊豆土肥地区からの富士山 国の重要文化財である天城山隧道

○狩野川流域砂防事業
 天城連山に源を発し,幾多の支流を集めて駿河湾に注ぐ狩野川は,鮎釣りのメッカとして,また田方(たがた)平野を潤す水源として身近な存在でありますが,昭和33年9月26日の台風22号「狩野川台風」では,降り始めからの雨量は天城山北側で739mmに達し,天城山系に1,000余箇所の山腹崩壊をもたらし,氾濫した河川は沿線の家屋,田畑を呑み込み,死者684人,不明者169人,家屋被害6,775戸,浸水面積30km2に及ぶ大災害となりました。
 狩野川台風の翌年の昭和34年から,国土交通省の直轄砂防事業により,5つの砂防施設が作られました。その後40有余年の歳月が経過し,河川崩壊箇所の復旧及び未然防止,荒廃渓流の堆積土砂の整備,土石流発生の危険渓流での土砂災害防止などを主目的に砂防設備が計画され,緊急度の高い箇所より順次施工された結果,狩野川源流域の各支流には,砂防堰堤98基,床固工10箇所,山腹工7箇所,計115の砂防施設が完成しております。
 このため,昭和57年の台風18号では,狩野川台風に次ぐ降雨量を記録したにもかかわらず,人的被害はなく,家屋被害,被害総額とも大幅に軽減されております。

狩野川台風による被害状況

○今後に向けて
 近年の異常気象による風水害や,伊豆地域周辺における群発地震の発生,伊豆大島や三原山の噴火,そして東海地震・東南海地震発生の危機が叫ばれている昨今,もう一度,狩野川台風の教訓を振り返り,危機管理に対する姿勢を常に保ちながら,自然災害への日頃からの対応をしっかりと整えていく必要性が強く求められています。
 また,昨年(平成16年)10月9日の台風22号による被災教訓を踏まえましても,まだまだ治山・治水に取り組む必要性は認識されたことから,今後も自然災害を防止し,災害に強いまちづくりを推進するための砂防・治山・治水対策は,伊豆市の豊富な自然との共生を図り,住民の安全・安心の地域づくりに不可欠なものであると考えます。
 砂防事業につきましては,国・県及び関係機関の皆様方には多大なるご尽力をいただいておりますことを,あらためて感謝申し上げますとともに,今後とも直轄砂防事業の更なる推進をお願いいたしまして結びといたします。