続発した局地的集中豪雨と教訓・鳥取県〜安心・安全な県土づくりを目指して〜

山田和成(Kazunari Yamada、鳥取県県土整備部治山砂防課長)
小澤誠(Makoto Kozawa、鳥取県県土整備部治山砂防課土木技師)

「砂防と治水180号」(2007年12月発行)より

●局地的集中豪雨の続発
 平成19年8月22日,鳥取県の東部に位置する若桜(わかさ)町と八頭(やず)町で,最大時間雨量86mm/h の局地的集中豪雨が発生しました。続いてこの2週間後,9月4日には,鳥取県の中部に位置する琴浦(ことうら)町で,鳥取県歴代最高となる最大時間雨量103mm/h の局地的集中豪雨が発生しました。
 8月22日の豪雨による土砂災害は,若桜町と八頭町に集中,特に若桜町の角谷(つのたに)川と屋堂羅(やだら)川では,土石流による被害だけでなく,砂防河川に土石等が多量に流入,河道閉塞し氾らん,人家等が倒壊するなど甚大な被害が発生しました。
 9月4日の豪雨も同様,琴浦町に土砂災害が集中しました。この豪雨では,渓流で発生した土石流災害だけでなく,いたるところで山腹崩壊が発生,人家,道路,耕地など甚大な被害をもたらしました。
 1名負傷者が出たものの,これだけの土砂災害が発生しながら,人命を無くされた方はありませんでした。

若桜町角谷川:砂防河川が氾らん,倉庫倒壊

若桜町屋堂羅川:河道閉塞による床上浸水
琴浦町上中村谷川:人家に土砂流入 琴浦町中村地区:多数の山腹崩壊

●鳥取県の対応
 災害発生時刻はどちらも20時頃で勤務時間外でしたが,携帯電話への自動通報などにより豪雨発生を知り,職員は速やかに参集,情報収集を行いました。しかしながら,降雨が局地的で夜間であったこと,しかも職員が待機している総合事務所から離れた地域であったことから,情報が集まりにくい状態が続きました。
 このため,降雨が続く夜間ではありましたが,総合事務所職員が現地調査を実施,被害情報が集まるにつれて,被害の甚大さが判明しました。その日のうちに被害範囲と概要は把握できましたが,翌朝からの詳細調査のため,地上と鳥取県防災ヘリコプターを使った上空からの調査を実施するとともに,応急復旧工事にも着手しました。

●町の対応
 若桜町では,土砂災害発生前に避難指示を発令,これにより避難した住民は,難を逃れることができました。八頭町や琴浦町でも,現在鳥取県が提供している土砂災害危険度情報を活用して住民に注意を呼びかけた結果,土砂災害発生前に自主避難されていたなど,住民の事前に避難する意識の浸透といったソフト対策の効果も見られました。

●国土交通省の現地支援
 若桜町と八頭町の土砂災害発生から2日後,8月24日には国土交通省砂防部保全課から,石田補助砂防係長が現地調査のため来県。同日,国土交通省中国地方整備局からは,河川計画課・森田建設専門官がヘリコプターによる調査を実施,鳥取県職員も同乗して上空から調査を行いました。
 琴浦町の土砂災害においては,発生から2日後の9月6日に独立行政法人土木研究所土砂管理研究グループから内田主任研究員が現地調査のため来県されました。
 こうした国土交通省の素速い対応のおかげで,現地で被災状況を確認しながらの復旧工法協議が実現,速やかな応急復旧着手と恒久対策である災害関連緊急砂防事業の工法決定,さらには土砂災害発生から約3週間という短期間で事業採択していただくことができました。こうした国土交通省の迅速な対応により,住民に安心感を与えられたことと思われます。
被災地で石田補助砂防係長(左)と小林若桜町長(左から二人目)

●この災害からの教訓
 情報は待っていても集まらない,災害発生時は当然のこと,発生後の調査設計時においても,技術職員が自ら現地に足を運び,現地で見て,判断することが大切であると感じました。そして,いち早い情報収集とともに,警戒避難体制の確立のためにも,ソフト対策の重要性を感じました。
 それと,住民から寄せられた話では,「運良く難を逃れたが,どうすることもできなかった」「表現のしようがないほど激しい雨が,1時間くらい降った」「あられみたいな雨粒だった」など,局所的集中豪雨の恐ろしさが伝わってきました。鳥取県としても,住民の安心・安全を確保するため,局地的で短時間に猛烈な豪雨に対応できるよう現在の防災体制について再点検を行い,県や市町村などの関係機関との情報収集・伝達方法について検討を始めたところであります。
 また,砂防と治山の担当者が一緒に現地調査を行い,それぞれの長所を生かした対策方法の検討と,スムーズな事業間の調整がなされました。これにより,被災地域で砂防と治山の両面から,総合的かつ効果的な対策方法の選定が可能になりました。ちなみに,鳥取県は全国で唯一,治山と砂防が同居する「治山砂防課」で,土砂災害および山地災害に対応しております。

●おわりに
 被災地の早期復旧のため,素速い対応をしていただきました国土交通省砂防部保全課をはじめ関係機関の皆様に,あらためて御礼を申し上げます。県民の安心・安全のため土砂災害対策を進めていきますので,今後ともよろしくお願いします。