SABO NEWS LETTER  No.23 1999/11/4


6. 台湾921集集大地震 土砂災害現地調査報告(概要)



 
 (社)全国治水砂防協会は、(社)砂防学会(社)日本地すべり学会と共同 で、去る10月11日から17日にかけて、台湾中部における大地震に よる土砂災害の現地調査を実施した。以下はその報告の概要である。




1、台湾


台湾は沖縄本島の南西約600kmにあり、面積は36,000kuで九州とほぼ
同じである。人口は約2,200万人であるが人口密度は約600人/kuで日本 の約320人/kuの2倍である。産業面ではバナナ、サトウキビ、ウー ロン茶および米の二期作等の農産物で知られているが、一方最近はコン ピューター関連産業等、先端技術産業への進出も盛んである。



2、地震

地震は9月21日午前1時47分(現地時間)に台湾中部の南投県集集付近で
発生。マグニチュード7.7と阪神・淡路大地震の7.2を上回る規模であっ た。地震断層の発生が著しく車籠埔断層は南北に105Kmにわたり、最大 段差約8mもあり、この断層に沿った地域での被害が特に大きかった。
死者行方不明者約2400人、家屋全・半壊約15,000戸にのぼり、建物・道路 等の被害とともに土砂災害も甚大であった。



3、土砂災害


丘陵部から山間部にかけては、広範囲にわたる山腹崩壊や巨大な地すべり
が発生し、地震時の災害の他、今後の降雨による二次災害に地元住民およ び関係部局も危機を感じている。
以下に主な災害の事例をあげる。

(1)大規模崩壊


 山腹・段丘面の崩壊等の発生箇所は、台湾側の調査によると2,000箇所近
くにのぼっている。特に九九嶺(台中県)を中心とする地域では、崩壊 面積が5,900haにも及び、今後の降雨による土石流や流木による災害が心 配される。

(2)大規模地すべり


クブニ山(南投県、地すべり面積180ha)、草嶺(雲林県,地すべり面積
700ha)が 特に大きく、この他紅菜坪(南投県)やトウショウ坑渓(台中県)等の大規模地すべりが発生し、多くの死者・行方不明者の方々の他家や田畑の被害も大きい。 いくつかの地すべりは河川を閉塞あるいは河岸に押し出しており、湛水湖も発生しているので、その不安定化による下流への影響が懸念される。



4、調査所見

 上記に述べたように、激甚な土砂災害が発生し、今後も拡大のおそれがあるので、調査団としては次のような項目からなる所見を述べてきた。

 (1)斜面運動の分類 

 (2)斜面運動の現状 

 (3)必要な調査・計画

 (4)応急対策 

 (5)土地利用計画を含めた恒久対策等

これ等の所見が、今後の効果的な対策に役立つことを期待している。



5、今後の対応

 降雨による二次災害が心配されるので、まず警戒避難体制の整備が急務である。これと並行して応急対策工の実施、そして恒久的対策工の実施が必要である。今回の第一次調査では地震後間もないという時期の問題もあり、今後の対応を検討するための現状把握が主体であったが、次の段階として速やかに具体的対策がとられる必要がある。

 このために、阪神・淡路大地震等により得た経験・教訓を生かしつつ、速やかな復興のため日本と台湾の技術交流を進めているところである。



   

台湾921集集大地震土砂災害現地調査報告会の開催について

(社)全国治水砂防協会は、去る9月21日に台湾中部で発生した地震による土砂災害の調査を(社)砂防学会・(社)日本地すべり学会と共同で10月11日から17日にかけて実施しました。

 この調査の報告会を両学会の協力を得て、下記のとおり開催します。




1.日   時   平成11年11月15日(月) 15:00 〜 17:00

2.場   所     砂防会館別館3階 穂高会議室
            東京都千代田区平河町2−7−5
            電話 03−3261−8386
3.内  容 

 概況一般       小林 英昭  (社)全国治水砂防協会技術顧問
 地震の概要      土屋 智  (社)砂防学会、静岡大学教授
 大規模地すべり   藤田 壽雄  前(社)日本地すべり学会 会長
 山腹崩壊・土石流 水山 高久  (社)砂防学会理事、京都大学教授

4.そ の 他  問合せ先 全国治水砂防協会 小林・岩本