SABO NEWS LETTER  No.35 2000/7/14


6. Interpraevent(砂防国際会議)2000に参加して


全国治水砂防協会 理事長 大久保 駿

 インタープリベントは、オーストリアを中心としたヨーロッパアルプス諸国が集まって開いている土砂災害・洪水災害・雪崩災害防止の連携をはかるための国際会議です。

 1965年、1966年の災害は極めて激甚であったことと、オーストリアやスイスなどアルプス周辺諸国が連携をはからないと災害防止の万全を期せないと言う考え方から発足したものです。
1968年オーストリアのクルーゲンフルートで第1回が開催されて以来4年に1度開かれています。今回は第9回にあたります。我が国は第4回のバードイシュルから参加しています。以来、毎回建設省の砂防部長または課長などが参加するとともに、参加団を編成し多数の関係者が参加しています。第7回には初めてオーストリアから外に出てスイスのベルン、第8回はドイツのガルミッシュパルテンキルヘンで開かれました。

 今回はフィラッハで開かれ、我が国からは30数名が参加し、木村岐阜大学教授、丸谷信州大学教授、石川京都府立大学助教授が論文を発表され、武居京都大学名誉教授、水山京都大学教授、丸井新潟大学教授がセッションの座長をつとめられました。
 会議前日には行政官サミットが開かれ、建設省の近藤傾斜地保全課長、藤原水政課専門官(当時)、仲野土木研究所砂防研究室長が参加し、成立したばかりの「土砂災害防止新法」を紹介されました。

会議2日目には、武居名誉教授をヘッドとする日本側主催の昼食懇談会を持ち、ライポルト インタープリベント会長はじめ役員の方々や、オーストリア農林省ラホイ砂防部長、ウイーン農科大学ワインマイスター教授などの参加を仰ぎ、我が国の砂防の最新情報を提供し懇談を行いました。
武居名誉教授の挨拶と環太平洋インタープリベント2002(松本で開催予定)への招待、近藤課長による最近の日本の砂防紹介、伊藤文教大学教授と仲野室長による有珠山噴火の状況と砂防の取り組み、そして私がわが国の砂防協会などの公益法人の役割、活動をを紹介しました。

 3日間の会議中には、2回のディナーパーティーがもたれました。
1回目は会議場内レストランでのビユッフェスタイル、2回目はランズクロン城での中世風オーストリア伝統料理を楽しみました。

3日間の会議の後、丸井新潟大教授に随行していただき、ケルンテン州、チロル州の砂防現場視察を行いました。針葉樹林帯であった森林を切り開いて放牧地や草地にした結果流出の変化や侵食、崩壊の問題が出てきている斜面を再び森林に戻そうとする試みや、土石流などが氾濫する地域のゾーニングとこれにかかる施策など興味深い現場を案内してくれました。
対策工事もさることながら土地利用転換、ゾーニングなどいずれも住民や自治体との意見調整を真剣に、しかも密度高く行って進めている様子もよく理解できました。我が国も大いに参考にしなければならないことだと思います。現場を案内していただいた砂防工事事務所の技術者はいずれも、自分たちの仕事に自信にあふれた真剣な態度で本当に熱心に説明をしてくれたのが大変印象に残っています。

 会員の皆様も是非1度、日本の砂防のルーツの1つであり、かつて赤木正雄博士が砂防を学んだ土地、オーストリアで展開されている「砂防政策」をご覧になってはいかがでしょうか。


(上記に関するお問合せは全国治水砂防協会まで)