(社)全国治水砂防協会 UPDATE 2011/3/28

安全で安心な地域づくりを進めるための提言


 砂防関係の国庫補助事業は、その予算のほとんどが、平成22年度から始まった「社会資本整備総合交付金(以下「交付金」という。)」の「水の安全・安心基盤確保」の分野に移行した。この新たな交付金制度においては、都道府県が作成して国に提出する「社会資本総合整備計画」の中から、毎年の事業実施予算額や実施箇所を都道府県が決定する。また、この交付金では、従来の砂防関係補助事業を「基幹事業」とし、これに加えて「関連社会資本整備事業」及び「効果促進事業」を実施することができるようになるなど、従来の補助金制度とは大きく異なる制度となっている。
 こうした新たな予算制度を踏まえて、今後、バランスのとれた安全で安心な地域づくりを進めていくためには、以下に掲げるような施策が必要であり、これらを関係機関に提言する。

1.さらなる砂防関係予算の確保と事業の推進を
 地球温暖化の影響、山地の荒廃等により、土砂災害の増加のみならず大規模化が危惧されている。一方、砂防施設が整備されていない土砂災害危険箇所が多数現存し、多くの住民が土砂災害の危険にさらされている。土砂災害に対して安全で安心な地域づくりを進めるためには、国土保全の根幹をなし、土砂災害からかけがえのない住民の生命、財産、さらには日々の生活を守る砂防関係事業を強力に推進する必要がある。砂防関係事業の実施は、現下の厳しい財政環境の中にあっても決して先送りできるものではなく、予算制度にかかわらず、未然のハード・ソフト両面での対策をさらに集中的かつ強力に推進することが急務である。そのための所要予算の増額確保と緊急的な事業実施が必要である。

2.交付金による積極的な取り組みを
 交付金の基幹事業による砂防施設等の整備は基本的に重要であり、地域の実情に即したきめの細かく柔軟な事業採択を行い、重点的かつ計画的に事業を推進する必要がある。
 また、関連社会資本整備事業、効果促進事業については、土砂災害履歴調査、土砂災害ハザードマップの作成、危険箇所周知の看板設置・更新、避難所、避難路の整備、土砂災害防災訓練の実施、土砂災害防止教育の支援、砂防を活用した地域振興等市町村の課題に柔軟に即応できるように、市町村の事業計画や意見を適切に配慮した様々な取り組みを検討し、実施していく必要がある。

3.地域の実態を踏まえたバランスある予算配分を
 交付金制度においては、事業実施予算額や実施箇所が都道府県によって決定されるため、地方の裁量が増える一方、地域間の土砂災害に対する安全度に格差が生じることがないようバランスを取りつつ、緊急性、重要性の高い土砂災害危険箇所等への砂防関係予算を確保する必要がある。このため、予算配分に当たっては、土砂災害を受けた地域への集中投資はもちろんのこと、市町村等の意見を十分反映させ、また、保全人家や施設等への投資効果の大きさのみで判断することなく、過疎化や荒廃が進む中山間地域の実態等へも配慮する必要がある。

4.砂防施設の整備状況、予算情報等の明示を
 国、都道府県は、交付金によって実施可能な事業等交付金制度について分かりやすく周知する必要がある。
 都道府県は、地域間格差の発生を防ぐため、予算配分の基礎となる市町村ごとの土砂災害に対するハード・ソフト対策の進捗状況、予算配分に係る情報等関連情報の公開や市町村との密な情報交換等、透明性・公平性の確保に努める必要がある。
 また、国は各都道府県の土砂災害危険箇所数や砂防施設の整備状況等関連情報を公表し、都道府県への予算配分や、各都道府県における砂防関係予算へのバランスある配分に資する必要がある。

5.関係機関は切実な会員の声に対応を
 災害にあっては被災地域で直接住民と接し、最前線で事に当たっている我々市町村会員の切実な声を国会議員、国、都道府県は、真摯に聞いていただくことを切に望む。

平成23年3月28日

社団法人 全国治水砂防協会






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