UPDATE 2013/4/16

平成24年度市町村アンケート
「天然ダム対応に関するアンケート」結果に基づく提言の実施



 当協会では、平成24年度の事業として「天然ダム対応に関するアンケート」を実施しました。本アンケートは、過去に天然ダムの発生を経験し、それらへの対応を実施した8市町村(新潟県長岡市、宮崎県美郷町、岩手県一関市、宮城県栗原市、奈良県五條市、奈良県十津川村、奈良県野迫川村、和歌山県田辺市)を対象として、具体的な状況の把握とともに、市町村が住民の生命を守るために“何をすべきか”“どのような備えが必要か”といった課題を把握・整理するために実施しました。なお、本アンケート調査は、政策研究大学院大学「防災・復興・危機管理プログラム」の堀口楓太氏(埼玉県飯能市職員)と共同で実施しております。
 お忙しい中にもかかわらず、8市町村全てから回答をいただいており、ご協力に心より感謝申し上げます。

 4月10日に、本アンケートの結果に基づく提言書を、当協会の岡本正男理事長より国土交通省砂防部の大野宏之砂防部長にお渡しし、砂防関係事業の実施等への活用や課題の解決に向けてご尽力いただくようお願いしてまいりました。提言書の内容を下記に掲載いたします。
 なお、本アンケートの結果については、「砂防と治水212号」(2013年4月号)に掲載する予定です。


大野宏之砂防部長(左側)に提言書を手渡す
岡本正男理事長(右側)

 

天然ダム(河道閉塞)発生時に住民の安全を確保するための提言


 平成23年度の市町村アンケート調査は、大規模な土砂災害の発生を想定した場合に、市町村としてどのような対応が必要となるかについて全国の全会員市町村を対象に実施し、「大規模土砂災害に対する住民の安全確保に関する提言」としてとりまとめ、公表した。
 平成24年度は、過去、実際に規模の大きな天然ダムが発生し、それらに対応した8市町村に絞って、実際に対応した状況とそれらを踏まえた今後の課題等についてアンケートを行い、実情や課題、それらに関する意見をとりまとめた。これらの結果を踏まえ、天然ダムの発生時に住民の安全を確保するために必要となる重要な点を抽出したので以下のとおり提言する。

1.天然ダム発生に関する基本情報の把握
 天然ダム発生時に最も重要となる情報は、天然ダムが形成された位置と規模、及び決壊の危険性である。リモートセンシングを利用した調査や現在国土交通省が進めている、振動センサー及び衛星を活用した方法を広く展開する等、夜間の監視も含め、速やかな情報提供を図る必要がある。

2.天然ダムの規模等を踏まえた対応
 規模が大きく、保全対象が多い天然ダムについては、国あるいは県により緊急調査が実施され、速やかに状況の把握が可能であるが、それらの条件を外れる天然ダムについても、適宜、国、県及び砂防関係研究機関による支援・協力が必要である。

3.天然ダム決壊による水位に関する情報の提供
 天然ダムの決壊により発生する土石流が及ぼす影響については、土砂災害緊急情報により災害が想定される区域が通知されるが、さらに下流域に住む住民にとっては河川水位の上昇についても不安があり、水位に関する情報も提供される必要がある。

4.国、県等関係機関との連携
 国土交通省の地方整備局が被災市町村に派遣するリエゾンは、災害時支援としてたいへん有効であるが、多くの市町村はリエゾンへの対応に慣れていないことから、国、県等防災関係機関は、市町村と日頃から連携を円滑にするための訓練を積み重ねておく必要がある。

5.緊急時の電源確保
 大規模な災害時には、有線による情報網や電力供給が遮断される場合があり、衛星を利用した携帯電話やソーラー発電など緊急時の電源などが必要となる。これらのための技術的、財政的支援が必要である。

6.大規模な土砂災害に対する避難場所、避難経路
 大規模な土砂災害に対しては、一時避難場所だけでなく、二次避難場所等を決めておく必要がある。そのためには、大規模な土砂災害が予想される区域をある程度特定できる調査・研究を進める必要がある。

7.大規模災害を想定した市町村の災害体制の見直し
 市町村は、大規模災害を想定し、国や県等の防災関係機関と連携して、防災行政無線の増設、雨量情報・河川水位情報等の情報伝達システムの改善、災害時職員対応マニュアルの改善、防災関係機関との連携訓練の推進などを進めるべきである。

平成25年4月10日

一般社団法人 全国治水砂防協会






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