新 年 の ご 挨 拶


2009(平成21)年1月1日
(社)全国治水砂防協会

理事長   大久保 駿

 新年おめでとうございます。皆様にはすがすがしい気持ちで新年をお迎えになられたこととご推察申し上げます。

 さて、昨今アメリカに端を発する金融危機で私たち日本もその大きな影響を受けていますが、昭和初期に世界を襲った世界大恐慌にも匹敵する事態だとも言われています。この時に当時の政府が採った施策の一つである、いわゆる「救農土木事業」・・・時局匡救事業のことを少しお話してみようと思います。

 世界大恐慌の余波は日本をも襲い、企業倒産、失業者の続出、農作物価格の低下など大変な事態になりました。失業者は農山村に集中したこともあり、農山村は大変困窮しました。政府は困窮した農山村を救うために、この「救農土木事業」を起こしたのです。昭和7年のことです。

 農山村で行うことが多い砂防事業はさまざまな理由で最適ということで、前年の6倍もの予算措置をして各地の農村で砂防事業が集中して行われました。

 さまざまな理由というのは、一つは農山村に集中していた失業者に就業の機会と、収入の機会を創りだすことができるということです。もう一つは、土砂災害に悩まされていた農山村の安全が一挙に改善できるということであったのです。全国津々裏々に砂防事業を展開することで、一石二鳥も三鳥もの効果があったのです。その結果、困窮していた、そして災害に悩んでいた農山村の地域や住民の救済に大きな貢献をすることになったのです。

 当時実施した砂防施設はその地域の安全の要として、脈々と今も効果を発揮し続け、働き続けているのです。まさに、あとの時代へ残された大事な遺産であると思います。

 今、まさに当時の状況を思い起こさせる状況になろうとしていると言われますが、この先人の知恵に学んで、砂防事業の多様な効果に目を向け、農山村を、都市を守るために、しかも後世に大事な遺産を残すために砂防の仕事を広く展開してはどうでしょうか。そういう思いを巡らしながら新年を迎えました。 

 「砂防」という仕事は人知れず山の中で行われることが多いのですが、災害を防ぐということだけでなく、荒れた自然を穏やかな自然に戻し、地域の生活の基盤を創り、安全と活力を生み出す、といった多様な役割を担っています。砂防協会のホームページは、平成11年に開設して以来、今年で10年を迎えますが、この間、「砂防」ということの重要性、役割をもっと広く知っていただきたいと思って「砂防」についての様々な話題・情報をお届けしてきました。私ども職員自身の手づくりのホームページで、不十分、不完全だと思いますが、これからも職員一同懸命に、より良い、迅速な情報をお届けできるようがんばっていきたいと思っています。 

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。