SABO NEWS LETTER  No.41 2000/12/12


4. 富士山大沢崩れで大規模な土石流発生



 平成12年11月21日午後3時頃、大沢川で富士砂防による約30年間の観測史上において最大級の土石流が発生しました。大沢扇状地に流出した土石流約28万m3(速報では35万m3と発表)は遊砂地及び沈砂地においてすべて捕捉され、下流域への被害を未然に防止しました。

 富士山では、初冬及び春先の 200m/m程度の降雨で土石流が発生する特徴があります。発生源は、大沢の主に標高3,200〜3,500mの両岸の日常的な崩壊により標高3,200m 付近の大沢崩れの谷底に堆積した土砂が、低気圧に伴う大雨 (総雨量260m/m、時間最大雨量37m/m−大滝観測所)により土石流となって流出したものとみられます。

 土石流は、標高900mの岩樋終端まで一気に流下し、源頭域から12km下流の遊砂地及び沈砂地で捕捉され、下流流路工区間への新たな土砂流出はありませんでした。平成9年度に発生した2度の土石流約40万m3の堆積土砂を遊砂地及び沈砂地から緊急除石により取り除いてあり、この効果が大きかったと思われます。なお、35万m3の土砂流出に対する被害軽減額は285億円と想定されます。

 この土石流による一般被害はありませんが、標高2,200m付近源頭部調査工事現場のA型スリット3脚が流出し、岩樋終端の土石流監視施設観測装置における照明、水位カメラ、観測用架台(設置工事中)1基が流出しました。

 岩樋終端における土石流監視カメラの撮影した VTR判読から最大流量は1,420m/s3と推定され、観測値で最大のH3.11.28.土石流の約5倍にあたります。

 今後の方針として、富士山特有の土石流多発時期に際し、沈砂地及び遊砂地からの除石を早急に実施し、また源頭域での崩壊・侵食・堆積状況等を把握して、今回の土石流の発生及び動態機構等の解明し基本計画等に反映させます。なお、大沢川に設置した監視カメラ5台が土石流の流下状況を撮影しました。その映像と土石流の規模、想定被害額の速報値をもって、21日午後3時に記者会見を行い、テレビ7社、新聞11社が土石流のすさまじさと砂防施設の効果を報道しました。

(上記に関するお問い合わせは、建設省富士砂防工事事務所調査課まで)